本文へジャンプします。

TOP
クラウド トップ>クラウドナビ>基礎知識>開発環境をクラウドに移行するメリット

基礎知識

開発環境をクラウドに移行するメリット

2022年3月29日


開発環境をクラウドに移行するメリット

従来ではオンプレミス上に構築していた開発環境を、クラウドへ移行するというケースが徐々に増えてきています。本記事では、クラウド上に開発環境を構築することによるメリットを解説します。これから開発環境を構築する予定の方や、現在の開発環境のコスト・運用方法などに悩みを抱えている方は、ぜひ参考にしてください。

本記事をご覧いただいた方向けに、おすすめの記事をまとめました。こちらもあわせてご確認ください。

開発環境とは

「開発環境」とは、ITシステムを開発するために必要なインフラやソフトウェアなどで構成された、「開発者が開発作業を行うための環境」のことです。

ITシステムは非常に複雑なシステムです。そのため完璧に動作する完成品をいきなりリリースできるわけではなく、リリースに至るまでにはさまざまな開発工程を経て、実装を積み重ねて行く必要があります。こうしたシステムの開発工程において、開発者が機能開発を行うための専用の環境が、一般的な「開発環境」の定義と言えます。

まず「開発環境」でさまざまな機能の開発を行い、そして開発された機能は「テスト環境」でテストされます。しかし、機能的には完成しても、実際の稼働に耐えられるかどうかは別問題です。そこで本番と同等の「ステージング環境」で動作や負荷への耐性を確認した後に、最終的にユーザーが利用する「本番環境」へとデプロイするのが、一般的なシステム開発の流れとなっています。

開発環境のクラウド移行とは

開発環境のクラウド移行とは、文字通りオンプレミスで構築していた従来の開発環境を、クラウドへと移行することです。

よくあるケースのひとつが、これまでオンプレミスに置かれていたサーバー等のインフラを「IaaS」へ移行するパターンでしょう。「クラウドとオンプレミス-それぞれのメリット・デメリットを徹底比較!」で解説しているように、IaaSでは、サーバーやディスク、ネットワークなどのITリソースはクラウドベンダーが提供してくれるため、自社での機材の調達や管理を行う必要がありません。そのため開発人員が増加した場合も、機材調達やセットアップのリードタイムを考慮することなく、新しい開発環境をすぐに立ち上げることができます。また逆に人員の縮小があった場合も、購入した機材を余らせてしまう心配がありません。

なお「IaaS」や「SaaS」といったクラウドのサービス形態の違いについては、「IaaS、PaaS、SaaSの違いを整理して、クラウドサービスの特徴を知ろう」の記事をあわせてご確認ください。

クラウドに構築するメリット

開発環境のクラウド移行とは何かが理解できたところで、改めてそのメリットを解説します。とはいえ、基本的には「クラウドとオンプレミス-それぞれのメリット・デメリットを徹底比較!」で解説した通りで、オンプレミスに対するクラウドのメリットがそのまま開発環境にも当てはまります。

開発のスピードアップ

オンプレミスで開発環境を構築する場合、ハードウェアとソフトウェアの手配からキッティングやインストールなどの構築作業を、すべて自身で行わなければなりません。しかし、クラウドであればオンデマンドで必要なリソースをすぐに調達することができ、キッティングの作業も不要です。こうした環境構築期間の短縮は、結果としてに開発そのもののスピードアップに繋がります。

また、最近では新型コロナウイルスの影響をはじめとする世界的な半導体不足により、ハードウェアの供給の遅れや値上りが懸念されています。オンプレミスではこうした問題の影響をダイレクトに受けてしまいますが、クラウドはクラウドベンダーが保有しているリソースに余裕がある限り、こうした問題の影響も受けにくいと言えます。

コストの最適化

クラウドでは、サーバーのディスクやメモリをはじめとするスペックや台数を自由に変更できます。そのため、開発の進行状況に応じてシステムへの負荷が変化した場合でも、柔軟な対応が可能です。例えば、プロジェクトの規模が大きくなり、ビルドやテストに時間がかかるようになった場合を考えてみましょう。オンプレミスの場合、より高性能なハードウェアを調達する必要があります。しかし、クラウドであればサーバーをスケールアップさせて対応できるため、ハードウェアの購入にかかる費用を抑えることができます。また、スペックに余剰が発生した場合はその逆で、サーバーをスケールダウンすることで余計なコストを削減できます。開発環境が不要になった場合も、余ったハードウェアの処理に頭を悩ませる必要はありません。つまり、クラウドを利用すれば、プロジェクトのスケールや開発人員の増減にも、手軽に対応できるのです。

クラウドサービスの多くは、月々利用した分の料金が課金される「従量課金」を採用しています。これはつまり、開発を行う期間だけ一時的に利用するなど、状況にあわせたコストの最適化がしやすいということです。しかし、企業によってはこうした「最終的にいくらかかるか明確でない出費が継続する」ことを嫌い、クラウドの利用を敬遠することも珍しくありません。ですが、オンプレミスのサーバーも購入しておしまいではなく、運用し続けるには継続したメンテナンスコストがかかります。そのため、全体的なコストの最適化という視点で考えると、開発環境のクラウド移行は十分検討に値すると言えるでしょう。例えば、ニフクラをはじめ、従量課金制と月額課金制を選択できるベンダーも多く存在します。費用を理由にクラウドそのものを避けるのではなく、より費用を正確に見積りやすい月額課金制の料金プランを選択するなど、できる範囲でクラウドを活用する方法を検討してみてはいかがでしょうか。

運用・保守の工数削減

オンプレミスにおけるハードウェアのリプレイスや障害対応、ハイパーバイザーのアップデートといった作業は、運用担当者にとって大きな負荷のひとつです。しかしクラウドでは、クラウドベンダーが責任分界点に応じてハードウェアやアプリケーションなどの運用・保守を行うため、運用担当者はこうした煩わしい作業から開放されます。これも開発環境の運用・保守の工数削減に繋がるメリットのひとつです。

開発環境の標準化

システム開発におけるありがちな問題のひとつに、開発者ごとの開発環境の違いがあります。開発者が各自のPC上に、それぞれ独自に環境を構築しているような現場では、「ある開発者の手元では問題なく動くが、別の環境では正しく動かない」といったトラブルを起こしがちです。こうしたトラブルは開発現場に混乱を起こし、開発の進捗にも悪影響を及ぼします。

クラウドでは、サーバーのディスク、ネットワークといった構成をテンプレート化し、同様の構成の環境を簡単に再現できます。テンプレートを利用することで開発環境を標準化できると同時に、構築作業を大幅に省力化することも可能です。

APIを活用した自動化

クラウドは「コントロールパネル」と呼ばれるWebインターフェイスを備えており、リソースの作成や構成の変更といった作業は、ここから簡単に行えるようになっています。それに加えて、多くのクラウドベンダーではAPIを用意しています。APIを利用すれば、サーバーの作成、リソースの変更・削除、サーバーの起動・停止、ストレージの割当といった操作を、コントロールパネルの画面のクリックではなく、外部からコマンドを通じて行うことが可能です。

つまり、APIを活用すれば、前述の「開発環境の標準化」で策定したテンプレートに沿った環境の構築を自動化することも可能で、さらなる工数の削減に繋がります。APIの詳細については、「「API」がクラウドの運用の自動化を実現する!?」をあわせて参照してください。

テレワークへの対応

現在、世界的な新型コロナウイルスの流行により、テレワークの実施がより推奨されています。しかし、開発環境を社外に持ち出したり、ましてや自宅に持ち帰るというのは、機密保持の観点からも困難でしょう。かといって、自宅から社内のオンプレミス環境へリモート接続するためには、VPNの整備をはじめとした余計な手間とリソースがかかってしまい、開発者・インフラ担当者双方の負荷となってしまいます。

その点クラウドであれば、クラウドベンダーが提供しているVPNのサービスなどを利用することで、オンプレミスよりも容易に外部からのリモート接続を実現することができます。開発環境をクラウド化しておけば、突然テレワークへの移行が求められたような場合でも、場所を問わずに開発作業を継続しやすくなります。

DX推進の足掛かりとしても有効

開発環境のクラウド化は、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進の足掛かりとしても非常に有効です。

DXを実現するための第一歩としては、既存システムのクラウドへの移行が有効だと言われています。しかし、本番環境を含む稼働中のシステムをいきなりクラウドへ移行するのは、現実的ではありません。そこでまずはエンドユーザーへの影響がない社内システムや開発環境などをクラウドに移行し、クラウドを体験することから始めるのがお勧めです。こうした体験は、将来的にクラウドネイティブなシステムを構築する際のナレッジの蓄積に繋がります。

DXを実現するためのクラウド移行の詳細については、「デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現する「リフト&シフト」の5Step」やeBook「ハイブリッドの作り方-「2025年の崖」を超えるためのITロードマップ」もぜひ参考にしてください。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加