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基礎知識

急激な為替変動で注目!国産クラウドのメリットとは

2023年8月1日


急激な為替変動で注目!国産クラウドのメリットとは

近年、ITインフラをオンプレミスからクラウドへ移行する流れが加速しています。その大きな理由の1つとして、デジタル化によって人々の生活をより良いものへと変化させていく「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の推進が挙げられます。クラウドはオンプレミスと比べて、システム基盤としての柔軟性・経済的合理性・技術的な先進性といった面でのメリットが大きいのが特徴です。そのため、DXの実現にはクラウドの利用が必要不可欠であると考えられています。

クラウドとオンプレミスの大きな違いが、ITリソースの所有方法です。オンプレミスではITリソースを自社で「所有」していたのに対し、クラウドではリソースを所有するのではなく、ベンダーが用意したリソースを「利用」します。この「所有から利用への変化」を企業会計の観点から見てみると、ITを活用するためにかかる費用が「固定費」による数年単位の減価償却から、定期的な「変動費」としての支出へ変わることになります。つまり、クラウド時代のITリソースのコストは「消耗品費」や「電気料金」のように「利用した分だけを後から支払う」タイプのコストになるということです。

費用が変動するということは、電気料金などと同様にモニタリングと効率化によって、コスト最適化がしやすくなるというメリットに繋がります。しかしその反面、使ったリソースは一定なのにもかかわらず、為替相場の影響を受け、コストだけが高くなってしまうという問題も挙げられます。本記事では、ITリソースのコストが変動費になったことで発生する為替変動の問題と、その対応策として注目される国産クラウドについて解説します。

急激な為替変動でITコストの予測が極めて困難に

クラウドを使う最大のメリットとも言えるのが、リソースのオンデマンドな拡張です。これはリソースを所有せず、ベンダーが用意したものを利用するからこそ可能なクラウドならではの便利な特徴だと言えるでしょう。そのため、クラウドでは月額固定料金ではなく、利用した分だけ料金を支払う「従量課金制」が採用されているのが一般的です。ここでのポイントは、利用するリソース量が変化すれば、当然ながらかかるコストも変化するという点です。また、クラウドではサーバーのみならず、データの転送量やAPIの呼び出し回数などに対しても、課金が行われることがあります。これは言いかえると、「最終的にいくらかかるのか」の予測が事前に立てづらいことを意味します。

この問題をさらに難しくしているのが、為替相場です。外資の大手クラウドベンダーでは、ドル建てで支払いを行うものも少なくありません。ドル建ての支払いの場合、円高で得をするケースもあるものの、逆に円安の場合は、その影響をダイレクトに受けてしまいます。利用するサーバーの数やデータ転送量などは、過去の運用実績からそれなりの精度で見積もることは可能です。しかし、こうした為替相場の動きまでを長期に渡って予測することは困難です。そのため、為替相場の変動によっては、「システム構成は何も変わっていないのに今月から利用料金だけが突然跳ね上がった」といった事態が起こる可能性もあります。

もちろん、円建てで支払える外資クラウドベンダーも存在します。ですが、これも単に「その時のレートで円換算した価格で請求される」ということがほとんどであり、多くのケースでは月単位などの短期間で都度レートの見直しが行われます。そのため、円建て払いであっても為替相場に短期間で大きな変動があった場合、その影響は避けられません。

国産クラウドなら為替変動の影響が最小限

代表的なクラウドサービスと言えば、Amazonが提供する「Amazon Web Services(AWS)」やMicrosoftが提供する「Microsoft Azure」などが挙げられます。これらはいずれも海外に拠点を置くクラウドベンダーが開発・提供している「外資系クラウド」です。これに対して、日本国内に拠点を置くクラウドベンダーが開発・提供するクラウドサービスが「国産クラウド」です。代表的な国産クラウドとしては、富士通が提供する「FJcloud-V」などがあります。

国産クラウドでは、基本的に「円建て」で設定された料金テーブルをもとに支払いを行います。当然ですが、その料金は為替相場に連動するような短期間での変化は起こりづらくなっています。料金を決定する要因は、主に自分が使用したリソースのみによって決まるため、外資系クラウドと比較すると、ITコストの予測が立てやすいのがメリットです。

具体的な例としては、2022年に起こった急激な円安があります。2022年3月には約115円だった対米ドルのレートが、10月までの7カ月ほどの間に約150円まで下落し、歴史的な円安を記録しました。これはドル建てで支払っている場合、使用しているリソースに変化がなくても、たった7カ月でインフラ費用が約30%アップになったことを意味します。しかし、円建てで支払える国産クラウドであれば、ここまでの大きな価格の変化は発生しません。

もちろん国産クラウドであっても、エネルギー価格をはじめとする物価高騰などに影響され、長期的には料金が変わる可能性は否定できません。国産クラウドだからといって、まったく価格が変動しないわけではないことには注意しましょう。

データ保護やサポートなど、外資系クラウドにはないメリットも

国産クラウドのメリットは、前述のITコストの予測のしやすさだけではありません。国産クラウドを使う動機となるメリットを以下で解説します。

データ保護のリスクを回避

クラウドは、ITインフラやデータをインターネット越しに利用するため、「場所を選ばずどこからでも利用」できます。しかし、利用する場所を選ばないのがクラウドのメリットであるにも関わらず、データの保存されている物理的な場所を気にしなければならないケースも存在します。

米国には「CLOUD Act」と呼ばれる法律が存在します。この法律は、米政府が米国内に本拠地を持つ企業に対して、令状なしでもデータの開示を可能とするものです。そして、これは米国外に保存されているデータであっても例外ではありません。そのため、米国に拠点を置く外資クラウド上にデータを保存した場合、仮に日本のリージョンを利用していたとしてもこの法律の対象となる恐れがあります。

そうした中で、現在注目を集めているのが「ソブリンクラウド」です。ソブリンクラウドとは、クラウドサービスのうち、特に「セキュリティ」「コンプライアンス」「データ主権」について、各国の法的規制に準じていることが保証されているサービスを指す呼び名です。

国産のクラウドベンダーは、当然ですがデータセンターを日本国内に持っています。そのため、ユーザーが保存したデータは日本国内に置かれ、日本国外の法的規制を直接受けないというメリットがあります。こうしたメリットは、クラウドの機能や価格といったものの影に隠れがちです。ですが、クラウドベンダーを選定する際には、地味ながらも見逃せない重要なポイントの1つです。ただし、国産クラウドであっても海外のリージョンを利用した場合は、その国の法的規制の対象となることがあります。そのため、データが置かれる物理的なロケーションには、常に注意を払うようにしましょう。

なお、ソブリンクラウドの詳細につきましては、「ソブリンクラウドとは」をご覧ください。

サポートコストが抑えられ、日本語サポートで安心

外資系クラウドでは、24時間365日のサポート対応や電話での技術的なサポートを受けるためには、有償サービスへの加入が必要なケースが少なくありません。また、こうしたエンタープライズ向けの有償サポートは高額に設定されていることも多く、「小規模な案件をスモールスタートさせるためにクラウドを利用しているので、サポートコストが案件規模に見合わない」ということにもなりがちです。

国産クラウドでは、無償のサポート窓口が用意されているクラウドベンダーが多く、小規模な案件であっても使いやすくなっています。また、障害などのトラブル発生時も日本語による丁寧なサポートが期待できます。緊急時に日本語でサポートが受けられるのは、特にミッションクリティカルな用途であれば、大きなメリットと言えるでしょう。

ITインフラの構築運用にも「グローバルリスク」の考慮が必須の時代に

2020年代以降、新型コロナウイルス感染症の流行をはじめ、世界情勢の不安定化など、グローバル規模での社会環境の変化が経済に強く影響を与えています。企業はこうしたビジネスに影響を与える要因を「グローバルリスク」と捉えて、コントロールしていく必要があるでしょう。ビジネスやデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進にあたり、ITの存在は不可欠なものです。ですが、その仕組みを支える基盤たる「ITインフラ」もこうしたグローバルリスクの影響は避けられません。企業がIT戦略を立案・実現していくにあたっては、「ITインフラ」をどのように構成・運用するかについても、グローバルリスクを念頭においたマネジメントの重要性が高まってきていると言えるでしょう。

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