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基礎知識

デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現する「リフト&シフト」の5Step

2021年11月25日


デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現する「リフト&シフト」の5Step

デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するための第一歩としては、既存システムのクラウドへの移行が有効だと言われています。クラウドへの移行と同時に、すべての既存のシステムをクラウドに最適化された近代的なシステムへ置き換えられれば理想的です。しかし、さまざまな事情からこうした理想通りの移行は困難なのが現実です。

そこで、現実的なクラウド移行の手法として、まずは既存のシステムをクラウドに移し、そこから徐々に運用管理のスタイルをより先進的なものへと変えていく(モダナイズする)というものがあります。この手法を「リフト&シフト」と呼びます。

本記事では「リフト&シフト」について、手順や注意すべきポイントを解説します。

リフト&シフトとは

現在の日本では、官民を問わずIT化の遅れが大きな問題として認識されています。特にコロナ禍におけるテレワークへの対応力といった面でこの問題が明確に浮き彫りになってしまったと言えるでしょう。

こうした現状を打開するためにもDXの推進が重要とされています。そして、DXを実現するためには、経営戦略にデータやデジタル技術を反映させるためのITシステムが必要不可欠です。しかも、現在のビジネス環境は激しく変化し続けているため、企業のITシステムには、この変化に迅速に適応できる柔軟性も求められています。そこで、ITシステムの基盤として、最も効果的な選択肢となるのがクラウドです。

例えば、クラウドではオンプレミスの運用において負担となりがちなハードウエアのリプレイスなどで発生するコストをサービス利用料を支払う形でクラウドベンダーに委託することができます。また、ハードウェアの運用・保守に掛かっていた工数を大きく削減できるため、貴重なIT人材のリソースをレガシーシステムの保守で消耗せず、DXの推進といった、より価値の高い取り組みに割くことが可能になります。ここに挙げた例以外にも、オンプレミスのシステムをクラウドに移行するメリットは数多く存在します。クラウドを利用するメリットについては、より詳しく解説した「クラウドとは~今さら聞けない基本を徹底解説~」もあわせてご確認ください。

しかし、単にオンプレミスのシステムと同じものをそのままクラウド上に作ればよいというわけではありません。クラウドのメリットを最大限に引き出すには、システムの設計がクラウドの特長にあわせて最適化されている必要があります。とはいえ、既存のシステムをいきなりクラウドに最適化したものに作り変えられるかと問われれば、ハードルが高いと言わざるをえないのも事実です。

この問題に対する解決策の1つが、本記事で解説する「リフト&シフト」です。これはオンプレミスのシステムをクラウドに移行(リフト)し、その後、徐々に運用管理のスタイルをより先進的なものへと変えていく(シフト)というクラウド移行の手法です。

従来、この言葉は「オンプレミスからアプリケーションをリフトして、クラウドにシフトする」という意味で使われていました。しかし、最近は「クラウドにリフトして、クラウドネイティブな仕組みにシフトする」という意味で使われることが増えています。

リフト&シフトを推進するための5Step

リフト&シフトを進める手順として、ニフクラでは以下の5Stepを推奨しています。

  • Step1 オンプレミス環境の仮想化
  • Step2 クラウドの体験・評価
  • Step3 クラウドの利用拡大
  • Step4 ビジネススピードに対応するクラウド
  • Step5 クラウド利用の最適化

Step1は、クラウド移行の事前準備として、オンプレミス環境を仮想化する段階です。Step2・3は、システムを既存の設計のままクラウドへ移行する「リフト」の段階。そして、Step4・5がクラウドならではの技術的な特長を生かして運用管理を行い、そのメリットを最大限に引き出すよう「シフト」する段階となります。

この5Stepを進めていく際には、移行計画や移行作業をアウトソースせず、できる限り「内製」で行うことを意識するとよいでしょう。なぜならば、企業内のIT人材が直接クラウドを扱う機会を作ることで、将来的なクラウド活用のノウハウを自社内に蓄積することができるためです。これは、運用管理の属人化を回避すると同時に移行後のクラウド活用レベルを上げ、運用管理の生産性を高めていくためのスキルを育てていくことにも繋がります。

続いて、各Stepの概要を解説します。

Step1 オンプレミス環境の仮想化

オンプレミスのシステムでは、ハードウェア・OS・アプリが一体となって動作しています。対して、クラウドではクラウドベンダーが用意した仮想マシンの上にアプリをデプロイします。そのため、オンプレミスからクラウドへリフトするためには、まず自社のハードウェアからソフトウェア部分を「切り離す」必要があります。具体的には、仮想化技術を使い、ハードウェアと仮想マシンに分離するのがStep1です。

なお、オンプレミスであっても、ハードウェア上に直接OSをインストールせず、仮想化基盤上で仮想マシンを利用している場合もあるでしょう。このような場合は、Step1はすでに完了していると言えるでしょう。

Step2 クラウドの体験・評価

Step1で仮想化したシステムを実際にクラウド上で動作させて評価するのがStep2になります。ここで重要なのは、PoC(概念検証)レベルの評価に留まるのではなく、実際に運用していたシステムをクラウドへ移行させて評価することです。ニフクラでは、Step2に関連する機能として、VMware環境のイメージをニフクラにインポートできる「VMインポート」やL2延伸でニフクラと接続可能なインターネットVPN「拠点間VPNゲートウェイ」を提供しています。まずは少しずつクラウド上でシステムを運用し、評価とノウハウの蓄積を行うことをお勧めします。

Step3 クラウドの利用拡大

Step2までに得た知見をもとに、クラウドへの移行効果が高そうなシステムを順次移行していくのがStep3になります。多くの場合、すべてのシステムを一度にリフトすることはできないでしょう。そのため、移行対象に優先度を付けて順次行うことをお勧めします。その場合は、移行の難易度が低いシステムやハードやソフトの保守終了期限が近いシステムを優先するとよいでしょう。また、移行するシステムの規模が大きい場合、セキュリティ要件によってはリソースを専有で利用する選択肢も検討しましょう。ニフクラではStep3に関連する機能として、お客様所有のデータセンター内にニフクラ環境を構築・提供する「プライベートリージョン」やニフクラのサーバー部分を専有環境で利用可能な「プライベートリソース」を提供しています。

Step3まででリフト&シフトのうち、前半のリフト部分は完了となります。ここまでクラウド移行が進むと「ハードウェアライフサイクル」にまつわるコストの削減効果など、クラウドのメリットが実際に目に見えるようになってくるはずです。

Step4 ビジネススピードに対応するクラウド

Step4からは、リフト&シフトの後半であるシフトの段階となります。つまり、クラウドのメリットをより引き出せるように新たなシステムを構築したり、従来の運用管理スタイルを変えてゆく段階です。

そもそもDXとは、単にシステムをIT化するという単純な概念ではありません。ビジネス環境の激しい変化に対応し、製品やサービス、さらにはビジネスモデルそのものまでの変革が行えて、はじめてDXと呼べるのです。こうしたDXを支えるためには、迅速な変化に対応できる柔軟な運用基盤を構築することが必要です。

従来の運用管理スタイルをそのまま踏襲するのではなく、自動化を前提とした運用監視システムを活用したり、「CI/CD」を取り入れてビルドやテストの自動化を行うなど、将来的に「クラウドネイティブ」な環境で効率的な開発運用を行うための下地作りを行いましょう。クラウドには、企業がクラウドの活用レベルを上げていくことをサポートするためのさまざまな機能が用意されています。なお、ニフクラではStep4に関連する機能として、定常的な業務の自動処理を実現する「ニフクラAPI」や運用負荷を軽減し、アプリケーション開発にリソースを集中できる「エンジニアリングパーツ(PaaS)」を提供しています。

Step5 クラウド利用の最適化

Step5は、最初からクラウド上で構築・運用することを前提としたシステムを設計できる段階です。Step5まで到達できた時点で、すでにシステムの大部分はクラウドへの移行を終えているはずです。しかし、クラウドにはクラウド特有の考え方があるため、クラウドネイティブと呼ばれるシステムでは、単にオンプレミスのシステムを移行・改修するのではなく、クラウドにあわせた設計・運用が必要となってきます。

例えば、アプリケーションのコンテナ化やサービスのマイクロサービス化を検討する必要もあるでしょう。ニフクラでは、Step5に関連する機能として、Kubernetesクラスターを簡単に構築・管理できる「Kubernetes Service Hatoba」や他社クラウドへの接続をセキュアかつ簡単に実現する「プライベートアクセス for Equinix Fabric™」を提供しています。こうした最適化を進めることによって、クラウドの機能を最大限に活用したビジネス環境や、ユーザーニーズの変化に迅速に対応が可能なシステムが実現できます。

さいごに

「2025年の崖」が話題となり、多くの企業がDXの推進に取り組み始めています。多くの企業の足枷となっている「レガシーシステム」から脱却するためには、各企業それぞれのロードマップを描き、計画的に進めていくことが重要です。本記事の5Stepを参考にまずは可能な部分からクラウドに移行していくことを始めてみてはいかがでしょうか。

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