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基礎知識

オンプレミス回帰の要因と今後検討すべきハイブリッドクラウド

2023年9月15日


オンプレミス回帰の要因と今後検討すべきハイブリッドクラウド

近年、デジタル化によって人々の生活をより良いものへと変化させていくことを意味する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が、あらゆる業種・業界・領域で推進されています。

DX推進の第一歩としては、クラウドの利用が非常に効果的だと言われています。現に政府は政府情報システムの構築・整備に関して、クラウドサービスの利用を第1候補(デフォルト)として考える「クラウド・バイ・デフォルト原則」を打ち出しました。こうした後押しもあり、現在では多くの企業がクラウドを積極的に利用するようになり始めています。

しかし、その流れとは反対に一度、クラウドに移行したシステムをオンプレミスに戻すという動きも出てきています。本記事では、コストと時間をかけてクラウドに移行したにも関わらず、オンプレミスにシステムを戻すことになった要因やそのような経験を踏まえて検討すべき「ハイブリッドクラウド」を解説します。

オンプレミス回帰とは

一度、クラウド(主にパブリッククラウド)に移行したシステムを再びオンプレミスに戻すことを「オンプレミス回帰」と呼んでいます。

クラウドには、さまざまなメリットがあるため、オンプレミスからクラウドへ移行するのが世間のトレンドです。特にモダンなシステムであれば、クラウドでの利用を前提にそのメリットを最大限に活かした「クラウドネイティブ」な設計をするのが理想です。その中でオンプレミスに回帰するのは、言わば時代に逆行しているとも言えるでしょう。

ですが、メリットを期待して一度はシステムをクラウドに移行したものの、運用開始後に何からかの課題が発生することは珍しくありません。オンプレミス回帰は、このような結果として行われることが多くなっています。

オンプレミス回帰の要因

オンプレミス回帰が発生する代表的な要因としては、以下のような理由が挙げられます。

想定以上のコストが発生

クラウドは、クラウドベンダーが用意したITリソースをネットワーク越しに利用し、ユーザーはその利用量に応じて料金を支払う「従量課金制」を採用しています。そのため、クラウドの利用にかかる料金を事前に「正確に」見積もることは本質的にできないのです。仮にオンプレミスでの実績をベースに利用量を見積もり、予算を策定していたとしても、その見込みを上回るコストの発生を完全に防ぐことは困難です。

例えば、多くのクラウドサービスではシステムにアクセスするネットワークのトラフィック量やAPIの呼び出し回数も従量課金の対象となっています。そのため、リリースしたサービスが予想以上のスピードで成長し、急激なトラフィックやAPIの呼び出しが発生すると、予測と実績がかい離してしまうことも珍しくありません。また、外資系クラウドはドル建てでの決済が一般的です。その場合、使用しているリソース量自体は昨年度と同程度であっても、急激な為替変動によって、実際の料金が昨年を大きく上回ってしまうというケースもあります。

このように費用が極端に変動するリスクを避けたい場合は、長期的にも費用の見積もりがしやすいオンプレミスが好まれる場合があります。

パフォーマンスが安定しない

「パブリック型」のクラウドサービスでは、サーバーやネットワークなどのリソースを複数のユーザーで共有しています。これは、リソースを占有する場合と比較して、安価にサービスを提供できるというメリットに繋がる反面、サービスの品質がほかのユーザーの影響を受けやすくなるというデメリットにもなります。具体的には、同じサーバーやネットワークに「同居」しているほかのユーザーのサービスが一時的なアクセス集中などによって過負荷状態となると、巻き添えとなってシステムのパフォーマンスが低下する可能性があるのです。つまり、ITリソースをほかのユーザーと共有するクラウドでは、常に同じだけのパフォーマンスを発揮できる保証がありません。

そのため、常に安定したパフォーマンスを発揮することが求められるシステムでは、こうしたほかのユーザーに起因する影響を嫌い、性能保証があるオンプレミスを積極的に選択する意味があります。

予期せぬシステムの停止

クラウドでは、クラウドベンダーとユーザーがそれぞれの責任範囲において役割を分担し、作業を実施するという考え方で運用を行います。この考え方を「共同責任モデル」と呼びます。

具体的な例を挙げると、サーバーやネットワークのハードウェアの管理運用はクラウドベンダーに責任のある領域です。そのため、クラウドではハードウェアのリプレイスや障害対応といった作業をクラウドベンダーに任せることができ、ユーザーはインフラ部分の運用コストを軽減することができます。

ただし、クラウドベンダーに任せられるというのは、見方を変えるとユーザー側ではコントロールできないということでもあります。例えば、メンテナンスのタイミングがクラウドベンダーの都合に左右されてしまうような場合は、ユーザーにとって予期せぬシステム停止につながってしまうこともあります。また、クラウドベンダー側で長時間の障害が発生し、ユーザーのシステムが停止してしまったような場合も対応状況を見守るしかなく、歯痒い思いをすることもあります。

「インフラを自分達の責任でコントロールできない」という不自由さや、サービスの継続性がクラウドベンダーの対応能力に依存してしまう点に危機感を感じる場合は、クラウドの利用を避け、オンプレミスを選択するケースも珍しくありません。

セキュリティ要件を満たせない

クラウドでは、セキュリティ対策も共同責任モデルの考え方の下で実施されます。そのため、クラウドベンダーの責任範囲については、クラウドベンダーが行うセキュリティ対策に委ねることになります。

もちろん、クラウドベンダーは公開しているSLA・SLO・セキュリティホワイトペーパーなどに沿って、安心・安全なサービスを提供するためのセキュリティ対策を実施しています。しかし、自社で運用しているシステムが個人情報など機密性の高いデータを扱っていたり、少しの停止も許されない高度な可用性が求められるシステムなどの場合、クラウドベンダーが提供しているセキュリティ対策だけでは、要件を満たせない場合もあります。

ベンダーが提供している以上のさらなるセキュリティ対策が必要になった場合は、そのクラウドサービスの利用は断念せざるを得ないでしょう。

クラウドの経験を踏まえて検討すべき「ハイブリッドクラウド」

繰り返しになりますが、クラウドは共同責任モデルの責任範囲において、運用・保守やセキュリティ対策をクラウドベンダーに任せることができ、結果として運用コストを軽減できるのがメリットの1つです。ですが、これは裏を返せばクラウドベンダーがコントロールしている部分については、ユーザーでは手出しができないということでもあります。そのため、前述の理由のようにベンダーが提供している機能やサービスがシステムの要件を満たせず、そのクラウドサービスは利用できないということが有り得ます。このようなケースではクラウドの利用は断念し、オンプレミスで構築せざるを得ないでしょう。

ですが、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進のためには、クラウドの利用が欠かせないのもまた事実です。そこで有効な解決策となるのが、システムをクラウド、もしくはオンプレミスのみに寄せて構築するのではなく、双方のメリットを享受できるように両環境を併用する「ハイブリッドクラウド」です。

ハイブリッドクラウドとは、クラウドとオンプレミスを組み合わせて双方のメリットを享受できるように構築する方式を指す呼び名です。一般的にハイブリッドクラウドは、「オンプレミス」「プライベートクラウド」「パブリッククラウド」を組み合わせて構成されます。

例えば、システムを構成するサービスのうち、開発スピードや柔軟性が重視される開発環境や負荷に応じた迅速なスケールが必要なサービス部分はクラウドで構築してそのメリットを十分に享受し、クラウドではセキュリティ要件が満たせない機密性の高いデータを扱う基幹部分のみを自社管理下のオンプレミスで構築するという構成例が考えられます。つまり、ハイブリッドクラウドを使うことで、クラウドとオンプレミスそれぞれのメリットを効果的に「いいとこ取り」できるのです。

ハイブリッドクラウドをもっと詳しく知りたい方へ

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