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用語集

カーボンニュートラルとは

2021年10月20日


カーボンニュートラルとは

二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスの、全体としての排出量をゼロにすることを「カーボンニュートラル」と呼びます。勘違いされがちですが、「全体としての排出量をゼロにする」とは、温室効果ガスの排出そのものをなくすという意味ではなく、人々の活動に伴う温室効果ガスの排出量から、森林などによる温室効果ガスの吸収量を差し引いたものをゼロにすることです。温室効果ガスの排出そのものをなくすことはできなくても、その排出量が自然吸収量を下回っていれば、実質的に温室効果ガスは排出されないと言えるわけです。

本記事では、カーボンニュートラルが求められている背景とそれを取り巻く状況について解説します。

カーボンニュートラルが求められる背景

2015年にパリで開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において、地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」が採択されました。1997年に採択された「京都議定書」が2020年で失効するため、パリ協定では2020年以降の地球温暖化対策について定められています。

パリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2°C未満に抑えるという具体的な目標が設定されました。パリ協定の採択をきっかけに、企業が気候変動に対応した経営戦略の開示(TCFD)や脱炭素に向けた目標設定(温室効果ガス排出削減目標を定めたSBT、事業を100%再生エネルギー電力で賄うことを目標とするRE100など)を行うなど、脱炭素経営に取り組む動きが世界的に進展しつつあります。

また、日本では2020年10月26日の第203回臨時国会の所信表明演説において、菅義偉内閣総理大臣は「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにし、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言しました。日本におけるTCFDの賛同機関数、SBT認定企業数、RE100参加企業数などは世界的に見ても上位に位置するとはいえ、これは非常にチャンレンジングな数値であると言えるでしょう。

カーボンニュートラルへの取り組みを経営戦略として開示することは、地球環境への貢献だけに留まらず、自らの企業価値の向上に繋がることが期待できます。一般的に投資家は、中長期的なリターンを得るため企業の持続可能性を評価しますが、財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)を投資判断に組み込む、いわゆる「ESG投資」が注目されてきているのです。

カーボンニュートラルのメリット

環境省による中小規模事業者のための 脱炭素経営ハンドブックでは、カーボンニュートラルのメリットとして以下の5つを挙げています。

優位性の構築

環境意識の高い企業では、自社のみならず、サプライヤーに対しても温室効果ガスの削減を求める傾向が強くなっています。そのため、カーボンニュートラルを目指すことは、自社の競争力の強化や売り上げ、受注の拡大に寄与すると考えられています。

光熱費・燃料費の低減

カーボンニュートラルを達成するためには、従来の非効率なプロセスや設備を更新する必要があります。効率の良い設備を導入することで、光熱費や燃料費の低減が期待できます。

知名度や認知度の向上

温室効果ガス排出量の大幅な削減を達成できた企業は、国や自治体からの表彰対象となることがあります。これによって、企業の知名度や社会における認知度が向上する可能性が見込めます。

脱炭素の要請に対応することによる、社員のモチベーション向上や人材獲得力の強化

温室効果ガス排出量の削減は、世界的な課題です。このような大きなチャレンジに対し積極的に取り組む姿勢を示すことは、従業員のモチベーションの向上に繋がります。また、このような企業は気候変動問題への関心の高い人材から共感・評価されやすくなるため、人材獲得力の強化にも繋がります。

新たな機会の創出に向けた資金調達において有利に

企業の地球温暖化問題への取組状況は、投資家が投資判断に組み込むだけでなく、金融機関が融資先を選定する基準にも加味されています。日銀が気候変動対応の投融資を促す新制度を設けるなど、脱炭素経営を進める企業へは融資条件を優遇することも行われています。カーボンニュートラルを目指すことは、企業の資金調達面においても有利に働く可能性があります。

日本におけるカーボンニュートラルの課題

日本は地理的な要因から、太陽光や風力といった発電手段が安定した電力の供給に向かず、電力供給の大半を火力発電に依存しているのが現実です。2019年時点で全発電電力量のうち再生エネルギーが占める割合は、18%に留まっています。

2018年の実績では、日本の再生エネルギー発電導入容量は世界6位、太陽光発電導入容量では世界3位となっており、これらは決して低い数値ではありません。ですが、再生エネルギーだけで電力を賄うことは現実的ではなく、火力発電のように安定して出力の調整ができる、バックアップ発電手段によるサポートは必須となります。しかし、火力発電は、CO2の排出が大きな問題となってしまいます。また、発電以外では産業部門の鉄鋼や化学工業など、どうしても生産時にCO2を排出せざるを得ない分野も存在します。

そのため、高効率・低炭素の新技術の開発やカーボンリサイクルといった対策が現状における課題と言えるでしょう。

IT業界におけるカーボンニュートラル

DXの推進に伴うIT機器の利用増加などによって、大小問わずデータセンターにおける消費電力は増加する傾向にあります。そのため、IT業界においても温室効果ガス削減に向けた省エネルギー化が課題の1つとなっています。そこで、IT業界では以下に挙げるような施策が行われています。

ソフトウエアによるIT機器の制御でエネルギー効率の向上

IT機器自体の省電力化だけでなく、ソフトウエアによってIT機器を効率よく制御することで、エネルギー効率を向上させようという取り組みです。実際にソフトウエアを改良してサーバーやストレージへのアクセス効率を向上させることで、消費電力を大幅に削減できることがわかっています。

実際に消費電力を削減するためには、ソフトウェアの改良が省エネルギー化にどれほど貢献したのか、定量的に評価できなくてはなりません。そこで、ITサービスのエネルギー効率指標を算定する方法が、国際規格「ISO/IEC 23544:2021 Information Technology – Data Centres – Application Platform Energy Effectiveness (APEE)」として発行されています。

クラウド利用によるエネルギー効率の向上

多くのクラウドベンダーのデータセンター(いわゆるハイパースケールデータセンター)では、高度に最適化された冷却システムを採用しているため、オンプレミスを想定した小規模なデータセンターが設置される一般的なオフィスビルなどの建物に比べて、サーバーの冷却に使用する消費電力を抑えられるようになっています。また、クラウドでは、サーバーを仮想化して集約するため、物理サーバーを直接利用する場合に比べて多数のサーバーを効率よく運用できます。つまり、オンプレミスのシステムをクラウドヘ移行するだけで、温室効果ガス排出量の削減に繋がります。

再生可能エネルギーの利用

前述の通り、クラウドはオンプレミスと比較して効率よくエネルギーを利用することができます。しかし、クラウドの利用拡大に伴い、データセンターが利用する電力自体は増加の傾向にあります。

そこで、省電力化とあわせて利用する電力を再生可能エネルギーに置き換えるといった試みが重要となっています。富士通の川崎工場では、使用する電力を2021年4月1日より、すべて再生エネルギーに切り替えると発表しました。また、富士通のデータセンターから提供するクラウドサービスの運用に関する全電力も同様にすべて再生エネルギーにすることも発表されています。

脱炭素経営に取り組む企業との取引・サプライチェーン構築

カーボンニュートラルの達成のためには、事業者自身はもちろんサプライチェーン全体で脱炭素経営に取り組む必要があります。そのためには、当然、温室効果ガス排出量削減に取り組む意思を持った企業と取引を行わなければなりません。

なお、原材料調達から製造・物流・販売・廃棄に至るまで、一連の事業活動に関連する温室効果ガス排出量を合計したものを「サプライチェーン排出量」と呼びます。温室効果ガスを効率よく削減するためには、やみくもに手をつければよいというわけではなく、排出量の多い箇所を把握する所から始めなければなりません。サプライチェーンにおいて、優先的に削減すべき対象を明確にするためにも、サプライチェーン排出量を把握しておくことは重要となっています。

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