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2025年の崖とは

2022年5月16日


2025年の崖とは

本記事では「2025年の崖」とその対策について、現在の状況も交えて解説します。

「2025年の崖」の概要

経産省は前述のDXレポートにおいて、部署ごとに分断化したシステムや過剰なカスタマイズによって複雑化・ブラックボックス化したシステム、いわゆるレガシーシステムがDX推進を阻害する原因となっていると指摘しています。

こうしたブラックボックス化したレガシーシステムを抱えたままでいると、爆発的に増加するデータを十分に活用することができないため、DX実現の足枷となることは間違いありません。また、レガシーシステムは多くの技術負債を抱えることになるため、維持管理費用が高騰するという問題や保守運用者の不足が発生し、結果としてセキュリティリスクが高まる、というのも無視できない問題です。加えて、レガシーシステムの保守・運用にリソースが割かれた結果、現在の世界の主戦場であるクラウドベースのサービス開発・提供に参入できなくなる可能性も指摘されています。

そして、このような状況を抱え続けたままでいると、結果として2025年には年間最大12兆円の経済損失が生じるであろうという試算が出されています。これを「2025年の崖」と呼んでいます。

2025年の崖問題とDXレポート

この中間取りまとめでは、2018年~2020年の2年間におけるDXへの取り組みは一部の先進的な企業のみが一定の成果を挙げたに留まっており、具体的には約90%の企業はDXに全く取り組めていない、もしくは散発的な取り組みに留まっていることが記されています。そして「我が国企業全体におけるDXへの取組は全く不十分なレベルにあると認識せざるを得ない」と強く断じています。

こうした状況の中、追い打ちをかけるように発生したのが、新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延です。従来の企業活動が大きく制限されたコロナ禍では、ITインフラや組織・ルールをいち早く柔軟に変更して「ニューノーマル」に対応できた企業と、対応できなかった企業の間に、大きな格差が生じました。このように、DXへの取り組みは二極化が進みつつあるのが現状です。

さらに、DXレポート2を補完する形で追加されたDXレポート2.1では、「このような状況を打開するにも、デジタル技術の活用による産業全体の変革を促していくことが必要」と述べられています。また、DX後の産業の姿や企業のあり方、DXを加速させるための政策の方向性などについてもまとめられています。

DXレポートが示す「2025年の崖」対策とは

DXレポートで指摘された「2025年の崖」というキーワードは非常にインパクトが強く、その結果キーワードのみが独り歩きをして、本来とは異なる捉え方をされてしまうこともあります。具体的には、「DXとはレガシーシステムを刷新すること」というDXの本質とは異なる解釈がなされたり、「現時点で競争優位性が確保できていれば、これ以上のDXは不要」や「DX=単なる業務のIT化」と誤解されるケースも少なくありません。

こうした誤解を受け、DXレポート2には「DXの本質とはレガシーシステムの刷新ではない」と明記されています。レガシーシステムからの脱却だけで安心し、デジタル企業への抜本的な変革を行わなければ、「確実にデジタル競争の敗者としての道を歩むであろう」とまで言い切っています。また、DXの阻害要因とされる「日本特有のベンダー企業とユーザー企業の特殊な関係(相互依存関係)」を「受託から共創共育へ」と変える必要性についても述べられています。このような一見Win-Winに見えるベンダー企業とユーザー企業の相互依存関係ですが、DXレポート2.1では「低位安定」と表現されているのです。

より緊急性を持ったDXへの取り組みを進めるためには、こうした「相互依存関係からの脱却」も求められています。DXレポート内では、「そのために企業経営者のビジョンとコミットメントが必要不可欠」というまとめがなされています。

クラウドへのリフト&シフトが現実的な選択肢

とはいえ、長年続いてきたベンダー企業とユーザー企業の相互依存関係を、一気に解消するのは現実的には困難でしょう。また、変革の必要性は認識していはいるものの、ITインフラに費やすコストの肥大化は避けたいというのも、多くの企業に共通した考えと思われます。

多くの企業にとって、段階的にDXを推進するための現実的な選択肢は、やはり「リフト&シフト」によるクラウドへの移行です。まずはオンプレミスをクラウドに置き換えることで、ハードウェアを数年おきに更新し続けるというライフサイクルからの脱却を目指しましょう。レガシーシステムのメンテナンスで疲弊し切ってしまい、より価値のある変革に着手できないという状況から抜け出すことを考えるべきです。

また、クラウド移行によって自社のハードウェアからソフトウェア部分を「切り離す」ことができるため、ベンダー企業に丸投げする部分を段階的に削減しやすくなります。そしてクラウドの利用を拡大していき、自社でクラウドを運用するノウハウを蓄積すれば、最終的にはベンダー企業とユーザー企業の相互依存関係を脱し、クラウドの機能を最大限に活用したビジネス環境や、ユーザーニーズの変化に迅速に対応できるシステムの実現も可能になるでしょう。

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