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用語集

ガバメントクラウドとは

2023年11月20日


ガバメントクラウドとは

近年、クラウドサービスのキーワードとして、「ガバメントクラウド」という呼称を目にする機会が増えました。ガバメントクラウドとは、主に地方自治体へ向けて、共通的な基盤・機能を提供することを目的に政府が運用するクラウドサービス利用環境の名称です。本記事では、ガバメントクラウドの概要や生まれた背景などを解説します。

ガバメントクラウドとは

"(ガバメントクラウドは)政府共通のクラウドサービスの利用環境です。クラウドサービスの利点を最大限に活用することで、迅速、柔軟、かつセキュアでコスト効率の高いシステムを構築可能とし、利用者にとって利便性の高いサービスをいち早く提供し改善していくことを目指します。地方公共団体でも同様の利点を享受できるよう検討を進めます。"

なお、「ガバメント(government)」は政府を意味する英単語です。そのため、ガバメントクラウドは、日本語では「政府クラウド」とも呼ばれています。また、英語のまま略して「Gov-Cloud」と表記することもあります。

ガバメントクラウドの仕組み

地方自治体には、地域住民向けの行政サービスの提供など、さまざまな業務があります。日本には、数多くの地方自治体が存在しますが、自治体が違えども行っている業務そのものにそれほど大きな違いはありません。ですが、これまでは地方自治体ごとに独自に業務システムの開発・運用を行っていました。これによって、用途は似ているものの要件やデータ形式が異なるシステムが自治体ごとに乱立してしまっているのが現状です。独自システムの乱立は、自治体間でのデータ連携が難しくなったり、自身でシステムの運用・保守をする必要があるなど、多くの問題を生み出していました。

こうした問題を解決するためには、共通で利用できる行政に関わる業務システムの基盤(IaaS・PaaS・SaaS)や機能(アプリケーション)があると理想的です。そして、この業務システムの基盤をクラウドサービスとして、政府が提供することを目指したのが「ガバメントクラウド」なのです。ガバメントクラウドを利用することで、地方自治体は独自に業務システムの開発を行う必要が無くなり、導入コストの抑制や運用・保守の工数削減が期待できます。また、共通の基盤であるガバメントクラウドで開発されたアプリケーション間では、データ連携が容易となるメリットも生まれます。

ガバメントクラウドの仕組みを大まかに解説します。まず、アプリケーション開発事業者は基幹業務(住基・税・介護などのいわゆる17業務のほか、これに付属または密接に連携する業務)に利用するアプリケーションを標準仕様に準拠して開発し、ガバメントクラウド上に構築します。そして、地方自治体はガバメントクラウド上に構築されたアプリケーションの中から自分達の業務に必要なものを選択し、オンラインでの基幹業務に利用します。

ここでのポイントは、ガバメントクラウドとは単一のサービスの名称ではなく、あくまでアプリケーションを動作させるための基盤であるということです。実際に利用するアプリケーションは、さまざまなものが同時に展開されており、利用者である地方自治体は、必要なものだけを自治体の裁量で選択できるのです。そのため、ガバメントクラウドを利用しているからといって、すべての自治体が同じアプリケーションを使っているとは限りません。

ガバメントクラウドのメリット

前項でも簡単に触れた通り、ガバメントクラウドを利用するメリットとして、主に以下が挙げられます。

  • サーバーなどのハードウェアはもちろん、OS・ミドルウェア・アプリケーションなどのソフトウェアも所有する必要がなくなり、コスト削減につながる。
  • アプリケーションは、民間事業者がガバメントクラウド上で開発した複数の候補の中から選択できるようにすることで、競争によるコスト削減やユーザビリティの向上を図ることができる。
  • 標準で提供されている機能を利用することで、従来の独自システムよりも迅速な構築や、柔軟な拡張が可能となる。
  • 共通の基盤を利用することで、アプリケーション移行時のデータ移行やアプリケーション間のデータ連携が容易となる。
  • 政府が運用するため、セキュリティ対策や監視などの運用・保守を各自治体が行う必要がなくなる。

ガバメントクラウドの要件

ガバメントクラウドとは、あくまで政府共通のクラウドサービスの「利用環境」のことで、ガバメントクラウドという専用のIaaSが存在するわけではありません。ガバメントクラウドの実体は、民間のクラウドベンダーのインフラの上に構築されています。

ガバメントクラウドは、住基や税など重要なデータを取り扱う都合上、万全のセキュリティ対策が求められます。そのため、ガバメントクラウドの基盤として採用されるクラウドサービスは大前提として、「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)」に登録されている必要があります。そして、調達の際には、ISMAPに登録されたクラウドサービスのうち、ガバメントクラウドに必要な要件を満たしたものの中から採用することとなっています。なお、「ISMAP」とは、政府が情報システムを調達しやすくすることを目的に政府が要求するさまざまなセキュリティ対策を満たすクラウドサービスをあらかじめ評価し、リスト化しておくクラウドサービスの登録制度です。ISMAPの詳細については、「政府情報システムのためのクラウドセキュリティ評価制度「ISMAP」」をご覧ください。

  • 不正アクセス防⽌やデータ暗号化などにおいて、最新かつ最高レベルの情報セキュリティが確保できること。
  • クラウド事業者間でシステム移設を可能とするための技術仕様等が公開され、客観的に評価可能であること。
  • システム開発フェーズから、運⽤、廃棄に⾄るまでのシステムライフサイクルを通じた費⽤が低廉であること。
  • 契約から開発、運⽤、廃棄に⾄るまで国によってしっかりと統制ができること。
  • データセンタの物理的所在地を⽇本国内とし、情報資産について、合意を得ない限り国外への持ち出しを⾏わないこと。
  • 一切の紛争は、⽇本の裁判所が管轄するとともに、契約の解釈が⽇本法に基づくものであること。

また、ガバメントクラウドは、単一のクラウドベンダーのみで構成されているわけではありません。異なるクラウドベンダーが提供する複数のサービスを組み合わせて、相互に接続を行っています。令和4年10月時点で「Amazon Web Services」「Google Cloud」「Microsoft Azure」「Oracle Cloud Infrastructure」がガバメントクラウドとして採用されています。

このラインナップを見て、国産クラウドが採用されていないことに違和感を感じた方もいるかもしれません。ガバメントクラウドは、日本の政府が運用するサービスですが、見ての通り、現在採用されているのは海外のクラウドサービスのみであるのが現実です。これはガバメントクラウドの公募条件が厳しく、現在の国産クラウドではその条件を満たせなかったことに起因しています。ですが、この状況を鑑みて、令和5年9月に公募条件が緩和されました。

ガバメントクラウドは政府のサービスである以上、安全保障の観点からも国産のクラウドサービスで運用できるのが理想的と言えます。公募条件の緩和により、今後は国産クラウドもガバメントクラウドに参入することが期待されています。

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