基礎知識
プロジェクトの推進を効率化するチケット管理とは
2023年5月17日
プロジェクトを円滑に遂行するためには、各人がやるべきタスクを明確にし、それぞれのタスクに優先順位を付け、現在の状態を可視化することが何より重要です。本記事では、タスクを効率的に管理することができる「チケット管理」について、解説します。
チケット管理とは
「チケット管理」とは、主に開発現場で用いられる、プロジェクト管理の手法の1つです。チケット管理ではプロジェクトにおけるタスクを、その名の通り「チケット」という形で発行して管理します。各チケットには、「やるべきタスクの内容」「アサインされた担当者」「タスクの優先度」「期日」「現在の状態」といった情報が記録されています。
チケット管理のメリット
タスクをチケットで管理する最大のメリットは、なんと言っても業務の見える化です。チケット管理を導入することで、プロジェクトに存在するすべてのタスクを、「チケット一覧」として俯瞰することができます。これにより、誰にもアサインされず宙に浮いてしまっているタスクや予定よりも進捗が遅れているタスクがあった場合には、すぐに気が付くことができます。
チケットに対して行った変更は、その履歴が残るため、いつ何が決まり、誰がどのように進行したのかを、後から簡単に遡ることもできます。例えば、プロジェクトの進行上でトラブルが発生した際は、チケットの履歴が問題解決に役立ちます。また将来、類似したプロジェクトを行う際にも過去のチケットは重要な資産となります。過去の履歴を参考にすることで、スムーズな業務の改善に繋げることが可能になります。
プロジェクトの全工程にかかる時間やコストを試算しやすくなるのもチケット管理のメリットの1つです。チケットごとにかかった工数を把握できるため、プロジェクトにおける全工数は、すべてのチケットを合算するだけで求められます。チケット管理のデータを利用すれば、ガントチャートも制作しやすくなるでしょう。
チケット管理の流れ
プロジェクトによって差異はあるものの、概ねチケット管理は以下のような流れで行います。
1. プロジェクトで発生したすべてのタスクを洗い出し、チケットとして起票する
タスクをチケットで管理するためには、管理対象となるタスクを漏れなく洗い出す必要があります。チケットの登録漏れがあると、管理がそもそも成立しません。この作業はどうしても人間が行う必要があるため、抜け漏れが発生しないように十分に注意する必要があります。前述の通り、チケットはそれぞれタスク、現在の状態、優先度、期日、担当者などの要素で構成されています。これらの情報も明確にし、チケット管理システムに登録してください。
2. 作成したチケットをプロジェクトのメンバーに担当者という形でアサインする
実際にタスクを遂行するため、作成したチケットにプロジェクトメンバーを担当者としてアサインします。アサインにあたっては、チケットごとの工数を確認し、メンバーごとの稼動に偏りがないよう注意しましょう。
3. アサインされた担当者は、それぞれのチケットのタスクを遂行し、進捗管理を行う
担当者は自分がアサインされたチケットを、順次消化していきます。どのチケットから取りかかるのかは、チケットに記述された優先度や期日を手がかりに判断しましょう。進捗があった場合に進捗度を更新するのはもちろん、後からチケットを参照したり、他のメンバーに引き継ぐ可能性なども考慮し、遂行中に発生した新たな問題や関連情報を、チケットに随時追記していくことも重要です。
チケット管理で注意すべきポイント
チケット管理を行うには、いくつかの注意すべきポイントがあります。
まず1つは、チケットに切り出すタスクの粒度を揃えることです。タスクの粒度がまちまちだと、チケットごとにかかる工数が均一にならず、結果としてメンバーごとの業務の重さに偏りが発生してしまいます。とはいえ、タスクごとに作業量や難易度は異なるでしょうし、タスクによってはそれ以上の分割ができないこともあるでしょう。そのため、すべてのチケットの工数を均一にするのは、難しいのが現実です。そこで、個々のチケット単位だけでなく、全体での工数の合計を意識してチケットにアサインするメンバーを決定するよう心掛けるとよいでしょう。
チケット管理のメリットは、タスクを細分化し、把握しやすくなることです。しかし、目の前のタスクに集中しやすくなる反面、タスク同士のつながりが希薄となり、プロジェクトの全体像が見えにくくなることがあります。視野が狭くなってしまうことで、プロジェクト全体を見れば気が付く課題や改善点を見逃してしまう恐れもあります。また、自分が取り組みやすいチケットから着手してしまうことで、完了したチケット同士が上手く連動できず、結果的にプロジェクト進行が遅れてしまうことも考えられます。メンバーにチケットを振り分けたからといって安心せず、プロジェクトの全体像を常に見据えて、チケット同士の連携が取れるよう、密なコミュニケーションを取り続けることも重要です。
チケット管理を実現するには
チケット管理には、チケット管理機能を備えたツールを利用します。とはいえ、チケット管理だけに特化した専用のツールというものはどちらかと言えば少数派です。チケット管理以外の機能も備えた総合的な「プロジェクト管理ツール」を用いるのが一般的です。このようなツールとして、代表的なものに「Redmine」や「Backlog」などがあります。
プロジェクトの具体的な進め方はチームごとに異なるため、自分達にとって必要な機能を備えているかを考慮し、最適なツールを選定することが重要です。
DevOps実現に重要なチケット管理
現在のITシステムは、激しく変化する要求に対し、迅速に対応することが求められています。市場からのフィードバックを取り込み、次々と新機能をリリースするという、高速な開発サイクルを実現するため、現在注目されているのがDevOps(デブオプス)です。DevOps(デブオプス)とは、開発(Development)と運用(Operations)を組み合わせた造語で簡単に言えば「開発担当と運用担当が緊密に連携して、柔軟かつスピーディーにシステム開発を行う手法」のことを指します。
チケット管理を導入する目的は、タスクの抜け漏れを防ぎ、見える化によるスムーズな進捗管理を実現することです。大きなプロジェクトにおいては、複数のタスクが複雑に依存し合っています。そのため、1つのタスクが未完了のまま放置されてしまうと、依存するほかのタスクの進捗も止まってしまいます。特にタスクの抜け漏れは、速やかな進行の妨げになってしまうでしょう。しかし、開発中に発生するさまざまな「やるべきこと」を、人間の記憶や手作業で抜け漏れなく管理するのは現実的に困難です。そのため、DevOpsサイクルを高速に回すためには、チケット管理システムのような支援ツールの使用は必要不可欠と言えるでしょう。
なお、「やるべきことを管理して抜け漏れを無くす」という意味において、チケット管理は「バグトラッキングシステム(BTS)」ともよく似ています。実際、1つのバグ修正をチケットとして管理することも珍しくなく、チケットとバグ管理の両方の機能を兼ね備えたツールも存在します。BTSの詳細につきましては、「バグトラッキングシステム(BTS)とは」をご覧ください。
また、DevOpsの詳細につきましては、「DevOpsとは?概要やアジャイル開発との違い、メリットなどを解説します」の記事やニフクラ/FJcloud-Vが提供するeBook「これから始める DevOps導入ガイド」もあわせてご覧ください。