ニフクラ 講義収録・予約システム事例「遠隔講義の収録配信・予約システム基盤」
遠隔講義の収録配信・予約システム基盤にSINETとの接続が容易なニフクラを採用
筑波大学が鹿屋体育大学と実施している共同専攻プロジェクトに利用されている講義収録・予約システムの基盤が更改時期を迎え、コスト抑制の観点からクラウド化を検討。複数のクラウドを比較検討した結果、運用コスト、SINETとのL2 VPN接続、パフォーマンスおよびサポート対応の良さによりニフクラを採用した。システム制御や帯域などの不安要素も綿密な事前検証で払拭し、運用後も安定した稼働を実現。運用の効率化にも貢献している。
阿部 洋丈 氏
国立大学法人 筑波大学 システム情報系 情報工学域 准教授/博士
小幡 春菜 氏
エイチ・シー・ネットワークス株式会社
——システム基盤の更改を期にコスト抑制の期待からクラウド移行を決断
筑波大学は「開かれた大学」という建学の理念のもと、従来の観念に捉われない「柔軟な教育研究組織」と次世代の求める「新しい大学の仕組み」を実現しているグローバルな教育機関だ。なかでも鹿屋体育大学との共同専攻プロジェクトは、社会開発のためのスポーツ活用を多様な視点から学ぶことを目的に、遠隔講義や講義コンテンツの配信により、一つのカリキュラムを二つの国立大学が共同運営するユニークな取り組みだ。
今回、同校はこれまでオンプレミスで運用してきた講義収録・予約システム基盤を、更改を期にニフクラへ移行。最大の課題であったコスト抑制に加えて、運営の安定および運用効率化を実現した。
講義収録・予約システムは鹿屋体育大学との共同専攻プロジェクト開始にあわせて構築されたもので、事前のスケジューリングによりシステムが自動的に遠隔講義の収録を行い、インターネットを通じていつでもコンテンツを閲覧できる仕組みだ。教職員にも視聴する学生にも複雑な準備や操作を必要としない設計となっており、現在では学内の他の授業や大学説明会の収録や共同専攻の運営に関する遠隔会議などにも活用されている。
筑波大学 システム情報系 情報工学域 准教授 阿部洋丈氏は、クラウド移行の経緯について次のように語る。「クラウド化を検討した最大の理由はコストです。国立大学は常に予算の最適化に取り組まなければならず、更改時には構築当初ほどの潤沢な予算は確保できません。数年前から国立情報学研究所(NII)や他大学から情報を収集し、ハードウェアの調達コストが不要で、構築も将来的な拡充も柔軟といったクラウド化のメリットは把握していました。当初はPaaS(Platform as a Service)を検討しましたが、独自に改修を重ねた本システムと同等の機能を有するサービスは存在せず、また、組み合わせての利用としても実例が少なく、期限内での構築が厳しい状況でもありました。そこでオンプレミスからクラウドへの移行を基本方針に定め、複数のクラウドサービスを検討しました」
——万全なサポート体制と低コストSINET接続が安心なニフクラを採用
利用コストのほかに、クラウドサービス選定にあたり重視した要件がSINET※1とのL2 VPN接続だ。これが実現しない場合、数十ある教室のグローバルIPアドレスを個別に変更しなければならず、作業負荷が高くなってしまう。同システムの構築から運用を担当するエイチ・シー・ネットワークス株式会社 営業本部 第三営業部 第一営業グループの小幡春菜氏はニフクラを推薦した理由について、こう説明する。
「さまざまなクラウドサービスを比較、検討した結果、本システムのインフラ基盤としてニフクラが最適でした。コスト面ではそもそもの利用費がリーズナブルであることに加え、HA機能やメンテナンス時も無停止、24時間365日のサポート対応など、他社では有償のサポートが標準で提供される点も魅力でした。必須要件であったSINETへの接続も『プライベートアクセス for SINET』としてサービスメニュー化されており、安心感がありました」
本システムは配信サーバー、会議予約システム、他拠点接続のMCUや朝日ネットのLMS※2であるmanabaなど、複数のシステムが連携しており、クラウド移行には不安要素もあったという。筑波大学はエイチ・シー・ネットワークス、富士通クラウドテクノロジーズと共に綿密な事前検証を重ね、その不安を払拭。正式にニフクラの採用を決定した。この点について、阿部氏は「クラウド移行の懸念の一つ目は、ネットワークの瞬断や遅延です。スケジュールされた収録開始や停止のコマンドが正しく届かないと、予定された講義が収録されない、または収録してはいけない次の講義が誤って収録されるという事故につながりますが、ニフクラは瞬断や遅延もなく、正確に安定して動作してくれています。もう一つの懸念は、ビデオファイルは容量が大きいためアップロードに時間がかかったり、帯域を占有して他のシステムに影響が出てしまったりすることでしたが、ニフクラは他クラウドとのベンチマーク比較でも優れており、安心して移行に踏み切ることができました」と語る。
これらの検証および移行は2019年初頭より行われた。教育機関の講義利用サービスのため、システムが停止できるのは休学期間中のみであったが、小幡氏は移行もスムーズであったと話す。「ニフクラは管理画面が他クラウドと比べわかりやすく、構築しやすさを感じました。また、検証および移行期間中、弊社の開発チームとうまく連携いただき、技術的な質問に対しても迅速かつ明確に回答いただけました。SINETとの接続についてのサポートも万全で、予定通り、スムーズに移行が完了できました」。
——運用後もニフクラの有用性を実感教育現場にはクラウド活用が有効
2019年4月よりニフクラ上での稼働が開始され、現在まで大きな障害もなく安定しているという。運用開始後、阿部氏はある出来事でクラウド化およびニフクラの有効性を実感したと話す。「移行後に建物の耐震改修工事のためにシステムの移設が必要になったのですが、サーバーをクラウド化していたおかげで難なく乗り切ることができました。さらにその際、こちらの配線ミスでパケットループが起きてしまったのですが、ニフクラ側ですぐに異常を検知、お知らせいただいたおかげで影響を最小限に食い止めることができました。また、年次の法定点検に伴う停電の際にも、サーバーのシャットダウンや再起動などが必要なくなることも、運用の効率化につながります」。
クラウド化のメリットについて、小幡氏も次のように補足する。「サーバーのメンテナンスや証明書更新など、これまで現地に赴いて対応していた作業がクラウドならリモートで行えます。移動時間の削減による対応の迅速化は、お客様のみならず我々にとってもメリットは大きいです」
最後に阿部氏は、こう締めくくった。「今回の移行は、本学の他システムでの次期更改時の大きな参考となります。国立大学は予算の最適化と限られた人的リソースの中でICT利活用の推進が求められ、教育現場で求められるシステムはこれまでよりも迅速かつ柔軟に提供する必要があります。その点において、調達および構築のコストと期間が少なくて済むクラウド活用は、あらためてメリットが大きいと実感しました。ピークである新学期を想定した稼働率で構築した従来型のオンプレミスによるインフラは余剰リソースが発生し、コスト面でも運用面でも最適化しなければなりません。国立大学でのクラウド活用は単年度会計との共存の仕方など、乗り越えるべき事項もあります。ニフクラにはさらに利用しやすいサービスの提供を期待しています」。
※2 LMS(Learning Management System/学習管理システム):eラーニングの実施および管理に用いられる学習管理システム
遠隔講義の収録配信・予約システム基盤 [講義収録・予約システム]
遠隔地同士を円滑に結ぶ教育インフラとしての遠隔講義、予約収録(およびコンテンツ配信)システム。社会開発のためのスポーツ活用を多様な視点から学ぶことを目的として設置された鹿屋体育大学との共同専攻プロジェクトにおいて活用されるほか、学内の講義、遠隔会議にも活用されている。
企業情報
国立大学法人 筑波大学
1872年に創設された日本初の高等教育機関である師範学校を祖とし、1973年に新構想大学として誕生。あらゆる面で“開かれた大学”となることを建学の理念とし、従来の観念に捉われない“柔軟な教育研究組織”と次世代に求められる“新しい大学の仕組み”を率先して実現することを目指している。
- ※注製品名および会社名はそれぞれの会社の商標または登録商標です。
- ※注当社は、2017年4月1日にニフティ株式会社から富士通クラウドテクノロジーズ株式会社に社名を変更いたしました。
また、2017年11月1日にニフティクラウドからニフクラにブランド名称を変更いたしました。 - ※注本インタビューは2019年8月28日に行いました。2019年8月28日現在の情報です。
その他のアカデミック事例
「ニフクラ(旧:ニフティクラウド)」を利用した授業(青山学院大学)
入学したら1人に1つずつ、卒業まで使えるアカウントが学生全員に付与される形になるのが望ましい。
-
クラウド導入で、eラーニングサーバーの冗長性を低コストで実現。