ニフクラ DevOps基盤事例「GitLab EE」
全社DevOps基盤にGitLab EEを導入、開発運用効率を向上、ノウハウ共有が容易となり属人化を解消
富士通クラウドテクノロジーズは、全社共通DevOps基盤として「GitLab EnterpriseEdition」と「GitLab EE Premiumライセンス」を採用。優れた権限管理を活用してオープンソースソフトウェア(OSS)文化に基づくDevOpsを実現した。結果、生産性の向上やリリース期間の短縮、部門間でのノウハウ共有が可能に。利用層は非エンジニアにも広がり、課題管理や監査対応等にも役立っている。FJCTはこの経験とノウハウを活かしてGitLab社の上位パートナーとなり、GitLab EEライセンス及びマネジメントサービスの提供を開始。他サービスとの連携やDevOps関連の教育プログラム開発などを進めている。
五月女 雄一 氏
クラウドプラットフォーム本部
プリンシパルエンジニア
伊藤 将行 氏
クラウドインフラ本部 エンジニア
袁 睿 氏
ビジネスデザイン本部 サービスデザイン部 DevOps担当
——迅速なサービスリリースと 社内でのノウハウの共有に課題
富士通クラウドテクノロジーズ(以下、FJCT)には、お客様に提供するクラウド基盤を安定的に運用すると同時に、より利便性の高いサービスを開発し、その品質を高め続けるという使命がある。そのため常に多くの開発・運用プロジェクトが動き、改善を続けている。その高速なリリースやアップデートを実現するため、開発と運用が一体となって継続的な開発とデプロイを繰り返すDevOpsでの運用が求められていた。
以前からDevOpsに取り組んではいたが、プロジェクトごとに異なる環境、別々のツールを利用しており、ソースコード管理、課題管理、進捗管理など連携ができず、チーム外とはノウハウが共有できないという課題があった。また、チームによって進捗がスムーズな開発もあれば、苦労している開発もあるというバラつきが生じていた。プリンシパルエンジニアの五月女雄一氏はチームごとに異なる環境で開発していた従来について「課題管理や進捗管理ができていないチームもあり、課題の取りこぼしも発生していました。サービスのリリースも半年に1回ほどと頻度が低下していました」と振り返る。
そこで、2014年末からインフラ運用チームが新たな環境の検討を始め、DevOpsに最適な機能を1つのアプリケーション(One Tool)で備えたGitLab Enterprise Edition(GitLab EE)※1を導入したところ、非常にスムーズな開発・運用が実現した。その実績を踏まえて2015年には、全社で導入すべく社内の主要な開発・運用チームに働きかけを開始した。五月女氏は、GitLab EEを全社で導入することへの有用性を説明したが、全チームの理解を得るには苦労があったという。しかし、古い環境から、全社共通DevOps基盤へ積極的な移行支援を行い、導入効果を体感させたことで、2016年末から概ね全社での利用を開始した。
※1 GitLab Enterprise Edition:エンタープライズ様向けDevOpsツール
——日本の商習慣とOSS文化が 共存できるGitLab EEを採用
FJCTがDevOpsの環境としてGitLab EEを採用した最大の理由は、柔軟で適切な権限管理ができることだ。一般的にオープンソースの開発ツールは、衆知を集めるため全員に平等に権限が与えられる。一方、日本企業の開発体制は協力会社や協業先など、多くの外部人材が関わるため、平等に権限が与えられると他社のプロジェクトまで閲覧が可能になってしまう。自社のノウハウが流出することを恐れ、安心して仕事ができないようでは本末転倒だ。その点GitLab EEは自由なノウハウ共有と適切な閲覧制限を両立できる権限管理が可能。社員に対しては、全プロジェクトへ自由にアクセスできる権限を与え、外部人材には関わるプロジェクト範囲内のみ自由にアクセスできる権限を与えることで、社内外の参加者全員が安心してノウハウを共有しながら仕事ができる環境を実現した。「柔軟な認証、認可、トレーサビリティを実現するGitLab EEは、日本の商習慣・ビジネス環境の中にOSS文化を取り入れる非常に良いツールです」(五月女氏)。
DevOpsに必要な機能がすべて揃っていたことも大きかった。別々のツールを組み合わせて利用すると、個々に操作性が異なるため手間がかかる。また、適切な認証、認可、トレーサビリティを複数ツール間で維持、管理する手間もかかる。GitLab EEは1つのアプリケーション(One Tool)で必要なツールを探し使い方を学ぶ必要がないため、学習コストを低減できる。さらに、有償版であるGitLab EE Premiumライセンス※2も導入することで、GitLab社から直接サポートを受けられる点も決め手となった。
※2 GitLab EE Premiumライセンス:GitLab EEの有償ライセンス。高度なチームマネジメント、ロードマップなど機能を利用可能
——最短で2日に1回のリリースを実現 非エンジニアにも活用が拡大
GitLab EEを全社共通DevOps基盤として導入したことで、半年に1回程度だったリリースサイクルが最短2日に1回となり、大幅に短縮できた。また、全社共通DevOps基盤メンテナンスチームが責任を持ってバージョンアップに対応し、常に最新の機能を利用できるようになった。エンジニアの伊藤 将行氏は、「全社共通DevOps 基盤を利用する前からチームで設置した無ライセンスのGitLab EEを利用していましたが、毎月1回大きなバージョンアップがあるため対応しきれず、優れた新機能をうまく活用できていませんでした。現在はメンテナンスチームがそれに対応し、新機能のアナウンスもしてくれるので大変助かっています。GitLab EEのライセンスを導入して、豊富な有償機能を利用していくことで、DevOpsの経験がなくても自然と実践できると感じています」と語る。
GitLab EEの導入は、生産性向上にも寄与している。特にノウハウの共有面において効果が出ているとサービスデザイン部の袁 睿氏は話す。「他チームのソースコードを自由に閲覧可能になったことで、再利用性が高まっています。プロジェクトのノウハウが共有できることで、業務の属人化が排除され、生産性も向上しました。すべてのやりとりがGitLab EE上で完結するので、コミュニケーションコストが下がっているとも感じています」。さらに、利用者はエンジニアに留まらない。五月女氏は、「セールス部門にも開発の経緯が見えた方がお客様に説明しやすいだろうと、全社員にアカウントを作成し情報を公開していました。そのうち、セールス部門では案件の課題管理に使ったり、デザインチームが画像のバージョンを管理したりと、当初予定していなかった新たな使い方を始めています」と語る。その他、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の審査でGitLab EEの監査ログ機能が活躍したり、監査の進捗管理で使われるなど、活用の幅は極めて広い。
GitLab EEは、企業文化にまで影響を与えている。情報を共有する意思があっても環境がなければ実現は難しいが、GitLab EEがそのための場として役立っているのだ。伊藤氏は、「部門や会社をまたいで勉強会をしようとすると、調整や資料の共有が必要です。全社共通DevOps基盤を使うことでプロジェクトの立ち上げや周知が容易になりました」と語っている。
その活用は急拡大しており、取材時点でのユーザー数は500名強。同社の社員は300名弱なので、社外ユーザーが200名以上参加していることになる。また、プロジェクトが6,000件弱進行しており、課題管理のイシュー件数は累計10万件以上と極めて活発に利用されている。
FJCTは、これまでGitLab EEを使ってきた経験やノウハウをまとめて、同社のユーザーへGitLab EE環境の提供を開始。GitLab EEライセンスの販売に加え、ニフクラ上でのGitLab環境マネジメントサービス「ニフクラDevOps(β)」をスタートした。さらに、「DevOps基礎講座」として、FJCTの経験とノウハウを凝縮したトレーニングの提供も予定している。DevOpsのマーケティングを担当する袁氏は、今後の展望について次のように語る。「Kubernetes マネージドサービスであるニフクラ Kubernetes Service Hatobaやセキュリティサービスと連携して、ニフクラのDevOpsの取り組みをさらに進化させる予定です。FJCTは、そのファーストユーザーとして経験を積み重ね、ノウハウを含めてお客様に提供していきます」。
GitLab EE [DevOps基盤]
ニフクラ GitLab Enterprise Edition ライセンス
ニフクラが提供するGitLab EEのライセンスのサービス。ニフクラDevOps with Gitlab同様、日本語によるサポートを提供する。
ニフクラDevOps with Gitlab
ニフクラ上でGitLab EEを用いてDevOpsを実践できる環境を、運用サービスを含めて提供するマネジメントサービス。日本語によるサポートも提供する(現在はβ版。今後は正式版として提供予定)。DevOpsに求められる課題管理、プロジェクト管理、ソースコード管理、CI/CDパイプライン、コンテナレジストリ、セキュリティスキャンなどの機能をニフクラのプライベートな環境で利用できる。
企業情報
- ※注製品名および会社名はそれぞれの会社の商標または登録商標です。
- ※注当社は、2017年4月1日にニフティ株式会社から富士通クラウドテクノロジーズ株式会社に社名を変更いたしました。
また、2017年11月1日にニフティクラウドからニフクラにブランド名称を変更いたしました。 - ※注本インタビューは2021年8月6日に行いました。2021年8月6日現在の情報です。
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